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デジタルアーカイブの可能性を探る

歴史文化都市である鎌倉には多数の貴重資料があります。たとえば、玉縄、大船等の遺跡から出土した縄文土器、古代郡衙・中世武家屋敷など重層的に歴史を遡ることのできる今小路西遺跡群、やぐらや切通、堀切など市内各地に点在する各種遺跡から出土した埋蔵文化財、絵図や古文書、古写真などの近代史資料、年に数日公開される歴史的建造物や高田博厚コレクション等美術資料などです。

       

しかし、残念ながらその多くは市民に充分に公開されているとはいえません。鎌倉の歴史文化資産が活かされる博物館や埋蔵文化財センターを、との声は長年にわたって続いており今後も途絶えることはないでしょう。一方で、各資料の経年劣化や、洪水・地震など昨今の自然災害の激しさを思う時、危機管理的視点からも、先ず鎌倉が有する貴重資料のデジタル化を進め、デジタルアーカイブとして保存しておくことは急務と思われます。

 

 

会報196号でご報告した第1回鎌倉版MLA連携学習会(中央図書館主催)に参加し、その後「鎌倉にふさわしい博物館構想検討委員会」を傍聴することで、デジタルアーカイブについてもっと深く学びたいとの思いが募りました。幸いこの分野の第一人者である杉本重雄先生とのご縁に恵まれ、時をおかずに2回目の学習会を主催する運びとなりました。緊急開催だったため充分な事前広報ができなかったのですが、関係各課の職員、市会議員、各分野で活動する市民など、計33名の参加者でした。

 

筑波大学(図書館情報メディア系)名誉教授である杉本重雄先生は、日本のMLA連携(ジャパンサーチ)の運営方針を決める「デジタルアーカイブジャパン推進委員会・実務者検討委員会」のメンバーで、総務省「知のデジタルアーカイブに関する研究会」主査(20112012)や内閣府公文書管理委員会委員(20102014)をつとめられ、現在はスポーツアーカイブ構想(スポーツ庁)やメディア芸術データベース(文化庁)の有識者会議等に参加しておられます。

当日は、「ディジタルアーカイブについて―伝え、使い、作り、つながるための基盤―」と題する詳細なレジュメとともに60ページに及ぶパワーポイント資料を用意いただき、素人市民にもわかりやすくご説明下さいました。お話を伺い、MLA連携で進められる史資料のデジタル保存の意義深さと共に、持続可能な体制とするための課題も学ぶことが出来たと思います。

 

改めて資料のデジタル化は迅速かつ着実に進めていく必要を痛感するとともに、予算獲得のためには講師のご指摘のように、先ずはデジタルアーカイブを積極的に使い、伝え、つながることが大切と思いました。そして、図書館友の会としては、読書バリアフリーへの効果やデジタル格差への配慮についても注目したいと考えます。

 

最後になりますが、今回、文化財部には企画段階から全面的なご協力を頂きました。また、中央図書館、国宝館、歴史文化交流館では、職員の皆さんが積極的に参加して下さっただけでなく、事前に行った講師の3施設見学の対応を快く引き受けて頂きました。合わせて厚くお礼申し上げます。