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司書の新規採用を求める署名活動を開始しま す

 会報199 号でもお知らせしたように、 TOTOMO は 2019 年 12 月に市長、教育長あてに司書の新規採用を求める要望書を提出しました。鎌倉市が 30 年近くも司書有資格正職員の新規採用をしてこなかったことに危機感を覚えたからです。市からの回答は翌年 2 月にいただきましたが、残念ながら内容は極めて不満足なものでした。

 しかし、この状態を放置するならば、年月をかけて築いてきた専門職体制は崩壊し、他都市と比べても高い水準を維持してきたサービス実績の低下は免れないと考え、市民の力でこの状況を打開すべく、署名活動を開始すること にしました。

 市は司書の新規採用を停止しただけでなく、同時に正職員の定数を減らし続け、最大で31 名(うち司書 27 名)いた正職員は現在 23 名(司書 18 名)となり、それに反比例して非正規雇用者の割合を増加させています。市は要望書への回答として「図書館の効率的運営のため」ということを強調していますが、

ここでいう「効率的」とは「コスト削減」 と 同義であり、コスト削減の主な対象は「人」であることから「効率的運営」の実体は人件費の削減に他なりません。このまま職員の非正規化を推し進めると正職員に過度な負担がかかり、本来の意 味での「効率性」は失われ、非正規化の極である全面委託や指定管理者

制度を導入するならばサービス低下を招くだけでなく、コスト削減の効果さえなくなることは他自治体の事例で明らかになっています。

 いまコロナ禍で医療がひっ迫している自治体では感染した人が入院して治療を受けることができずに自宅で亡くなるという悲惨なことが起きています。行政改革の名のもとに、病床数や医療スタッフを削減したことがその背景にあると思われます。病床数を増やしても医療スタッフにはすでに過度な負担 が

かかっており、新たな補充も難しいことから医療崩壊からの脱却は容易ではありません。コスト削減の標的となる「人」、とりわけ専門的な技術を持った「人」の重要性が逆にクローズアップされていると感じます。

 図書館の場合も「人」の存在はサービスの質を左右する決定的な要因です。とりわけ鎌倉市の図書館は「人」でもっていると言っても過言ではありません。同規模自治体の図書館のなかで比較すると、資料購入予算は下位にあるのに資料の貸出数や有資格職員数の比率、コピー件数(これはレファレンス件数に比例していると考えられます)などは上位 にあるのです。これは司書採用され経験を積み重ねることで力量を高めた司書の努力で予算の少なさを乗り越え、サービス向上を実現してきたということではないでしょうか。

 しかしながら、1993 年を最後に司書有資格正職員の新規採用が途絶え、次世代職員の継続的育成はなされず、正職員の削減、資料費を含む図書館予算の低減傾向が続くという状況にあっては司書の努力だけに依存するのも限界にきています。

 2019年以前にも、 2006 年、 2008 年、 2009 年の 3 回にわたって同趣旨の要望書を出し、 2018 年には図書館の近代史資料室へ の専任の正職員の配置とそれに伴う司書の新規採用を求めましたが、やはり内容ある回答はいただけていません。人事に関することだけに厳しい課題ではありますが、 TOTOMO にとって

は積年の課題でもあるので、ここで簡単にあきらめるわけにはいきません。図書館を少しでも良くするという責任は市民にもあり、その責任を果たす力も市民にはあると考えますので、会員をはじめ多くの市民の方々に署名活動へのご協力をお願いする次第です。